硬派に渋さ一直線で行きたいと思っても、なかなかそうも難しいことがある。
俺は主にこのサイトとPIXIV(以降支部と書く)に漫画を載せている。男の娘アイドルの漫画もそうだし、ツユさんという和風のシリーズも描いている。もう数年ほどやっているので、自分の中ではそこそこ見てもらえていると思っている。そりゃもっともっといいねを貰えている人は腐るほどいるが、上を見ると果てしないからあんまり比べるべきではないだろう。俺が満足していればそれで十分だ。
それで、度々思うこと、それは描きたいものが必ずしも多く見てもらえるわけではないということ。
これは何かを作る人なら必ず抱える悩みであると思う。作りたいものと求められているモノのギャップに悩んでいる奴は多いはずだ。俺だってプロの漫画家でもないし、そんな大層な作品をかけているわけではないけど、やっぱりこのややこしい悩みを抱えている。
俺の場合で言うと、趣味全開のヘンな作品より、可愛いキャラが出てきて萌える作品の方が圧倒的に見てもらえる。勿論後者もある種趣味全開ではあるのだが、何も人間、性欲だけで構成されているわけではない。俺は水木しげるやら手塚治虫やら伊藤順二やらの、萌えとかもう無いような、暗くておどろおどろしい漫画や、暗い雰囲気の浮世絵、妖怪、日本家屋など、かなりジジ臭いものも、萌え要素のある作品と同じくらい好きだ。この頃はミニ盆栽を買おうとしている。
なので、そういった物…、渋い和風のモノ、可愛さとか萌えとかの要素がほぼないモノを描きたいとも思う。しかし、あまり手が出せていないのは、やはり支部であまりそう言ったものが見てもらえないと感じているからだ。
なぜか。それは、多くのユーザーがわかりやすい物を求めているからだ。
和風作品であっても、鬼滅の刃などは絶大な支持を得ている。それはやはり、(本編が面白いのは前提として)明快なテーマ・キャラ付けがされていることからだと思う。
鬼滅の刃に限らず、何事もぱっと見で容姿が整っていたり、華美な装飾がついている方が目に留まる。その感性自体は否定すべきものではない。人間の種類存続のための一種の本能だと思っている。
もっとオタク向けに掘り下げてみると、例えばキャラの胸がデカいとか、顔がイケメンであるとか、口調が好みのモノであるとか、そういった具合か。和風の作品になると、神社の鳥居と見た目の若い神様の組み合わせであるとか、吉原の花魁、陰間茶屋など。こういったいわゆるテンプレに沿っていた方が見てもらいやすいのは確かで、実際支部でキャラの属性タグをつけた作品と付けていない作品の評価数には大きな差があった。勿論タグに限らず、サムネに当たる絵が萌え萌えなキャラの絵であるとか、そういったものも評価されやすいようだ。
話が逸れるが、俺は吉原の花魁であったり、陰間茶屋といった要素をみだりに使うのは好きではない。当人たちの上流に属する者は教養もあり、品もあったりしたのだろうが、それを軽々しく作品の味付けに使うのは何ともお粗末な感性であると思う。商業BLなどにこういった、過去に陰間にいて~といったものが多いが、そういった店で客の相手をするという行為がそんなにも華々しい、美しい行為だとは俺は思えない。儚さ、色気の表現を何かはき違えてはいまいか?
本題に戻る。
評価について、趣味で描いているのだから気にしなければよいというのは勿論そうなのだが、(少なくとも俺は)作品を完成させたら誰かに見てもらいたい、という欲を抱えているので、どうしても多少評価の数は気になってしまう。
そのため、無意識に評価の多かった作品の傾向に寄せてしまうといった側面はあるかもしれない。これはビジネスとしてやっていくには多少必要かもしれないが、趣味として描いている漫画でこれをしてしまうのはどうも歯がゆい。
俺は地味なモノからにじみ出る出汁みたいなものを啜るのが好きなので、華美な物が好まれる現代のカルチャーとは少し相性が悪いのかもしれない。それでもこの時代に生まれてしまったから生き抜くほかない。上手く世間に好まれる物を取り入れつつも、ベースは自分の好きなモノで固めていたいとおもう。
だからたまには何かいかついオッサンしか出てこないような漫画とかも描いてみたいとおもうわネ。やるだけやってみてもいいカモしれないワ。
